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憧れの星霊術士

08 28, 2010 | Posted in 日記

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我が家は、代々続く星霊術士の家系です。
ボクは生まれる前から――それこそ、父さんが生まれるよりも遥か昔から――星霊術士になることが決まっていました。
父さんも母さんも、当時は行政府お抱えの星霊術士で、その息子であるボクも当然、星霊術士になるべく育てられていて、周囲の誰もが…星霊術士になると思っていたと思います。

おばあちゃんの話によると、人は、これを『運命』と呼ぶそうです。

…これも運命かどうかは知りませんが、ボクには双子の姉がいます。
双子なので、修行は当然2人一緒。そして、姉さんのほうはなぜかとても才能に溢れてて…修行のレベルは姉さんに合わせたものなので、ボクにとってはついていくことすらままならない、とても辛いものでした。
姉はあんなに優秀なのに、どうしてお前は…と、周囲の人々に姉さんと比べられるのが、辛い。
何より、大好きな姉さんの足を引っ張るのが…辛い。
毎日毎日、泣いてばかり。


そんなある日、家の近くに旅芸人の一座がやってきました。
下層にある、小さな旅団なのだそうです。
初めて経験する楽しい音楽、愉快な踊り…そして、素敵な笑顔を振り撒く彼らのことが、あっという間に好きになりました。
修行が終わった後、姉さんと一緒に毎日のように見に行きました。
何度も通ううちに、一座の道化師見習いの女の子と仲良くなりました。

彼女の名前は、キャロットエッタ・ラビンス。ボクと同い年なのだそうです。

ある時彼女に連れられて、舞台裏での練習を見る機会がありました。
彼女は玉乗りの練習をしていたのですが…何度やっても、上手くいきません。
何度も玉から転がり落ちて、そして怒鳴られて。
でも、何度怒鳴られても、彼女は笑顔を崩さないのです。

「ねぇキャロット…どうして、泣かないの?辛く…ないの?」

「私達のことを見に来てくれるお客さんね、最初は、浮かない顔してるお客さんも多いの。だから、そんなお客さんたちに笑顔になってもらう…それが私達の使命だって、団長は言ってるの。」
「私には、難しいことはわからないけど…でもね、カナタはいつも悲しそうな顔をしてる。だから、カナタにも笑っていて欲しいから、私、泣かないよ。」
「それにね、私怒られてばかりだけど…皆本当はとっても優しいんだよ。」

「だって…家族だもの」


彼女には、素敵な家族がいる。
それに比べて、ボクはどうだろうか?
父さんも、親戚も、姉さんのことしか見えていないのではないか。
辛い修行も、お金儲けのためにしているだけではないか―。

何日か経ったとき、勇気を出して父さんに言いました。
「ボクは…星霊術士にはなりたくない。」
旅芸人の皆みたいに、皆を笑顔にできる職業になりたい、と。
…家から追い出されるのを覚悟していた(姉さんなんかは、泣きながら「カナタのこと追い出しちゃいやぁぁぁぁ…」と言っていた)のですが、
父さんは、ボクを殴るわけでもなく、勘当するわけでもなく、ただ一言、
「そうか…」
とだけ言いました。


…次の週、父さんは行政府のお抱え星霊術士をやめました。
―辛い修行はやめて、下層でのんびりスピカでも描いてすごそう。ここ(家は比較的上層にあります)だと親類が五月蝿いしな―と。

ボクには、意味がわかりませんでした。
優秀な姉さんがいるのに、どうしてボクなんかのために無理な修行をやめるのか。
修行をやめれば、当然親類が黙っていません。
ボクを追い出せば、こんな暗いところに住まなくても済むのに。
ボクなんていなければ、皆は今まで通り豊かな生活が出来るのに。
なぜ、ボクなんかのために…。

いくら考えても、答えは見つかりませんでした。

下層での生活は、貯金があるおかげでたいして苦しいわけではありません。
しかし…暗いのです。
ドロースピカの効力が弱まってる箇所が、所々にあるのです。
周囲が暗いと、住む人の表情も自然と暗くなってしまいます。

そんな暗い空気を打ち払うのが…旅芸人一座。
新しい家のあまりにも近所だったため、偶然ではなかったのでしょう。
…父さんの考えていることは、よく分かりません。
最初からボクを追い出していれば、ボクはここにきていたのに、何故…?

そんなことを考えているうちに、父さんは言いました。
―今日から、近所の家々にスピカを描きに行くぞ、と。
…父さんは、ノソリンも、ジェナスも…それから、見たこともない星霊だって描ける星霊術士です。
なのに、どうしてボクにも描けるスピカなんて――
と、思った瞬間、

「カナタ…スピカを描いてみろ。」

「え?は、はい!…ドロースピカ!」

「…お前の描くスピカはダメだ。本物の空を見てきなさい」

「えっと…本物の…空…?」

「そうだ…本物の、な。…そこの階段を登っていけばいい。」

父さんはそう言い…いつもの杖と、食料の入ったリュック投げてきました。
ただ、それだけ。
…父さんの考えていることは、益々分かりません…。
父さんは、非常に合理的な性格です。
ボクを追い出すなら、間違ってもこんな面倒なことしないはずなので…何かの意味があるのだろうけど、それは分かりません。

上まで登るのには、半日ほどかかったでしょうか。
辺りはすっかり暗くなって…色々考えながら登ってたので、泣きそうになりながら。
ある時、階段はぷっつり途切れて…目の前には、木の扉がありました。
何も考えずに、扉を開いたその先は…初めて見る本当の空でした。
満天の、星空。
すごく、すごく綺麗でした。
当時7歳のボクの語録では、それ以外に言い表せないほどの空。
でも一つだけ、ハッキリ思ったのは、

「この空を…姉さんにも、キャロットにも見せてあげたい。」

…と。
覚えているのは、これだけです。
いつの間にか眠ってしまったみたいです。

目が覚めると、そこは我が家のベッドの上で…姉さんがボクの顔を覗き込んでいました。
どうしてここにいるのかを考える間もなく、姉さんに本物の空を見たときのことをすごい勢いで話しました。
ボクの様子に気がついて、父さんがボクのことを隣の部屋から呼んでいます。
…部屋には、明かりがついていません。昼間でもぼんやり暗いのです。

「…どうだった?」

「んとね、すっごく、すごく綺麗だった!とってもとっても…広かった!」
「そうか…。」
(ドロースピカで、部屋が明るくなった。)

「…星霊建築は、人々の生活を…人々の暮らしを豊かにするためのものだ。スピカも、ノソリンも、それは変わらん。」

「……」
「…下層には、スピカによる明かりが必要だ。しかし上層は上層で、住む人々の家が必要だ。」

どちらも、生活には欠かせない力…父さんは多くを語らないけど、きっとそういうことなのだろう。
ボクの好きな旅芸人が人々を笑顔にするように、星霊術士にも、人々を幸せにする力がある…と。

「星霊術士は、嫌か?」

「……父さん、一つだけ聞いてもいい?」
父さんは、無言で頷いた…ように見えた。

「どうして、ボクなんかのために、わざわざこんなことを…?」

「……」

「……家族だからだ。」







…あれから12年、このアクスヘイムに棘が発生してから半年…。
色々なことがありました。たくさんの人々に出会いました。
まだまだ半人前の、そんなボクだけれど、
何やら、エンドブレイカーとしての活躍が認められたみたいで…もしかすると、行政府お抱えの星霊術士になれるかもしれません。
皆のために空を描くことのできる、星霊術士に。
父さんと同じ…スタートラインの…星霊術士に。

『運命』なんかじゃない。
ボクの選んだ、星霊術士に。
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すてっぷ/カナタ

Author:すてっぷ/カナタ
最近ツイッターばっかりで更新頻度が落ちてるけど、なんとか生きてるよ!よ! な、1987年6月18日生まれの25歳

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 この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW1:無限のファンタジア』用のイラストとして、リル・トーストが作成を依頼したものです。
 イラストの使用権はリル・トーストに、著作権はベア絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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